持久系スポーツと筋トレの誤解、ついでに書籍紹介

今回は、当店のトレーニングに対する考え方(の一部)を知っていただけると幸いです。

先日の投稿で、忙しいランナーには筋トレがお勧めだよ、ということをご紹介しました。
中長距離のパフォーマンスにおける筋トレの影響を論じたBerrymanらの報告は、次のようにまとめています:

  • 競技種目(ランニング、自転車、クロスカントリースキーなど)にかかわらずパフォーマンスを改善
  • 競技レベルによらずパフォーマンスを改善
  • 最大筋力のトレーニング = 高強度の筋トレは低・中強度より効果的

ここで、持久系スポーツと筋トレにまつわる、ありがちな誤解をいくつか挙げてみたいと思います。

持久系なんだから低強度・高回数がいいんでしょ?

低強度・高回数の筋トレは筋持久力を向上させることができます。しかし「持久系だから筋持久力を」という考え方は、少なくともベストな選択ではないです。ひょっとしたら筋持久力と全身持久力を混同しているかもしれません。

アマチュアランナーを対象としたFei Liらの研究では、低強度の筋トレは、ランニングのパフォーマンスを改善しないことを報告しています:

 6-week of concurrent complex training (CPX) or heavy strength training(HST) and endurance training resulted in similar improvement in maximum strength, RE, and vVO2max. Importantly, both CPX and HST training resulted in greater improvements in eccentric strength and RE compared to endurance-strength (EST) that performed concurrent endurance-strength and endurance training.
(拙訳)6週間の複合トレ(CPX)または高強度筋トレ(HST)と持久的トレの組み合わせは、最大筋力、ランニングエコノミーやVO2maxでの走速度を同じくらい改善する。重要なのは、(低強度の)筋持久力トレと持久的トレの組み合わせ (EST)に比べて、CPXとHSTは両方とも、筋力やエコノミーの点でESTより大きく改善することである

Concurrent complex and endurance training for recreational marathon runners: Effects on neuromuscular and running performance (Fei Li et al 2020)

筋トレの利点は、競技の練習では鍛えられない体力要素を向上させたり、練習では難しいような高い負荷をかけられるところにあると思います。
競技の特性を考える必要はありますが、筋トレを実際の競技動作に近づける必要がどれほどあるのでしょうか。

体幹を鍛えればいいんでしょ?

優先順位の問題かな、と思います。
持久系スポーツでは「体幹トレをコンディショニングのファーストチョイスにはしたくないな」というのが筆者の(本記事執筆時の)考えです。もちろん対象トレーニーの状態によるのですが。

「意味がない」とは思いません。実際に体幹トレを採り入れて、好成績を出しているアスリートはたくさんいますし、競技力の基盤を高める旨の報告も多数あります。

一方、体幹トレが直接的に競技力を高めるかについては「明確でない」とする報告もあります。トレーニング歴や競技レベルによるバラつきが大きいようです。

In athletes, core training can improve core strength, dynamic balance, and sprint speed. However, its efficacy on other sports performance variables, such as agility or power, is not clear.
(拙訳)アスリートでは、体幹トレは筋力、動的バランスやスプリントの速さを改善しうる。しかし、アジリティやパワーといったスポーツのパフォーマンスにおける変数への有効性は明確でない。

Exploring the role of the core in sports performance: a systematic review of the effects of core muscle training(Bustos et al 2025)

スポーツの補強としての筋トレの役割は、筋力やパワーの向上です。持久系スポーツにおいては、神経筋系の発達により運動効率がよくなると考えられています。同じパフォーマンスを発揮する場合でも、より少ない努力で済むわけです。
前述のとおり「高強度は低・中強度より効果的」ですから、まずは体幹に限らず高強度の筋トレに取り組み、必要に応じて体幹トレを加えるのがよいと思います。

*ついでに言うと体幹トレ = 自重プランクだと思い込む方が多いことも気になっています。この話題はまた別の機会に。

筋肉がついたらカラダが重くなるでしょ?

種目によっては「軽さは正義」です。長距離走や自転車のヒルクライムレースなどでは、体重がパフォーマンスを妨げることがあるかもしれません。
ただし「だから筋トレは不要」というのは短絡に過ぎるのではないでしょうか。筋トレせずに勝ち続けている選手にとっては確かに不要でしょうけれど。

もし不安なら、カラダが重くなりパフォーマンスが落ち始めた時点で筋トレを止めればいいだけでは?
そもそも持久系であれば、異化作用の影響で、簡単には重くならないのではないでしょうか。

ぜひ読んでください

最後に書籍のご紹介です。
競技スポーツと筋トレについて詳しく知りたい方に、河森直紀さんの著書「競技力向上のためのウエイトトレーニングの考え方」をお勧めします。

*本記事で紹介する書籍は、筆者が自費で購入したものです。出版社・著者からの依頼や提供はありません。

ロジカルで明快な良書だと思います。運動のパフォーマンスを向上させたい方だけでなく、その指導者にこそ読んでいただきたい一冊。筆者が特に気に入っている部分を、本書「あとがき」から引用します。

基本となる考え方さえ理解できていれば、世の中にあふれている方法論やハウツーものの情報の真偽を見極めたり、目の前のアスリートに当てはまるかどうかを判断したりできるようになります。

これです!筆者はこういう人を一人でも増やしたいのです。

目的に応じて、適切なトレーニングを。
こんなジムでよろしければ、ぜひお立ち寄りください。

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